7-1東工大・清華大合同プログラムの先

 東京工業大学と中国の清華大学・大学院修士課程合同プログラムがスタートし丸五年がたった。資料によればこの間、東工大から二十名、清華大から六十四名、合計八十四名の学生が参加。三年前からは博士後期課程の合同プログラムもスタートし一、二期生からは相手大学の博士後期課程に入学した学生もいる、とのことである。二十一世紀に入り、日中関係は産業経済、人的交流等の各断面で結びつきをそれまで以上に強めている。「東工大・清華大大学院合同プログラム」による学術交流は、双方の学生が刺激されることで国際化への相乗効果が期待され、関係をより深化させる人材育成の実験の場として堅牢な実を結びつつある。  両国の四月と九月の学期制度スタートの違いを乗り越え、修士課程はバイオコース、ナノテクコース及び社会理工学といった社会科学領域まで含め三コースがある。このプログラムの最大の特徴は、修士課程に参加した学生に対し、単位取得後は両大学から学位が贈られる「デュアル・ディグリー」制度。学生の将来に様々な意味で大きな可能性を付与するもので、次世代の日中関係の発展などにも影響して行くであろう。  馬齢を重ねているだけであるが、筆者は、東工大百年記念館で秋に清華大から留学生を迎える「ウェルカム交歓会」や、冬の二月には帰国する留学生を激励する「フェアウェル交歓会」に毎年のように呼ばれてきた。この合同プログラムは理論社会学の橋爪大三郎運営委員長、バイオマテリアルの権威で募金委員長でもある赤池敏宏教授を中心に推進されている。こうした交歓会では東工大から学長の挨拶があり、筆者は清華大側を代表する形で、未熟な中国語で挨拶をすることもある。特に清華大から東工大に留学してくる学生の日本語習熟度は目を見張るものがあり、将来に期待がもてる感を強くする。 *  清華大学は日本のジャーナリズムでは理工系の中国一の名門と紹介される。これは解説として充分ではなく、辛亥革命以来の長い歴史の中の“総合大学”であり、最高学府として本誌「ザ・サンクチュアリ」(二〇〇五年十月号)でも詳述されているような“中国の至宝”なのである。現代中国のキリストと評する者さえいる朱鎔基元総理、現在の胡錦濤国家主席、次代の総書記といわれる習近平国家副主席など多数の国家要人や政府要人を輩出。いわば旧東京帝国大学のような権威の象徴となっている。  清華大の学生は、「科挙」にも喩えられる、十三億人の母集団の中でトップの厳しい選考に合格した子供達。中国は四特別市と二十八程の行政区分で構成されているが、清華大の入学定員数は夫々の地域で異なる。北京市や上海市などは毎年約四百名。しかし中国西部や辺境地域の入学定員は数名と極めて少ない。  一例であるが、内モンゴル自治区(定員五名)へ行ったことがある。フホホトから西北部のゴビ砂漠に至る中間地帯は、海抜も高く砂漠と言うより草原といった領域も広く、円形の移動式住居(ゲル=中国語ではパオ)に住む遊牧民にも受験適齢期の子供達がいる。日常は親から習った騎馬技術を身につけ数キロ先の羊の総数を言い当てる、裸眼視力五・〇クラスの子供達。こうした中にも自分を自家発電したような利発な子供がいる。テキストという紙に書かれているものの奥も突き通すような眼力があるように思われた。親の示唆で大学入試直前に若干のこうしたテキスト類を与えられただけで受験。それで長期間、受験塾通いしてきた北京や上海の子供と同じ点数を取り合格するのだ。また欧米のトップ大学院から引く手あまたの清華大生を日本に呼ぶのは至難の業。日本で学んだケイ新会教授ら親日派の協力も大きいが、募金委員長らの尽力は察して余りある。

 

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