8-3名門コーネルの景観

 コーネル大学のアドミッションの小論文試験の一例を枠内に示した。十年以上前、愚息から見せてもらったものである。米国が生んだ二十世紀最高の作家との評判が高いトーマス・ウルフの著作からの出題であり、外界へ出た青年の多感に揺れ動く心情を描写した作品――。演繹的だが「受験生がどのような人間なのか」を知りたいとする問題である。こうした論文テストで志願者の「質」と「レベル」はある程度把握できよう。また論文の論理構成、文章力のレベルは歴然とする。本人のセンス、ウイット、ユーモアなども露呈する。基礎教科のほか受験生の英語力TOEFL六百点以上は必要で、「答えのない問題」だけに回答の幅は広がり、成績優秀の他に全人格的素養が問われる。きっと入学審査官(Admission Officer)も論文の配点評価が楽でないことであろう。マークシート方式など受け入れ側が楽をしていて優れた学生は取れない、といわんばかり。  我国では、答えがある問題に対し解答を見出すが、答えのない質問に対しては頭を抱える学生が多い。また受験前の十代で身体障害者施設や介護施設などで奉仕し、会話を通し相手と交わる応分の体験がないと、個々の価値観の多様性を認め合う深い解答は得られない。我国のテストでは「答えのある質問」の下で公平性が重んじられるが、人生とはもともと不公平性に満ち満ちた道ともいえるのである。管見にすぎぬが、我国の受験でもし上述のような小論文が当たり前の社会になれば、例えば「ノーベル賞受賞」のニュースで鬼の首でも取ったかのような北朝鮮的な騒ぎにならず、フランスのEt alors?「エ・アロー(それでェ)?」といったようなレベルの対話が当たり前の国になれるであろう。


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